2026.02.18
父が母に贈ったサファイアの指輪
これは、私の母のリングです。

まだ20歳そこそこだった両親。
お金もなく、地方から出てきたばかりの頃、母は私を産んでくれました。
父は激務で、母はほとんど一人きり。
そんな中での出産でした。
父が母に贈ったのは、母の誕生石であるサファイアのリング。
古いプラチナ台に留まったその指輪は、その後の子育てや仕事復帰の中で、次第に身につける機会を失っていきました。
「これ、リフォームしたいな」
母の一言から、母の今の指に似合うように作り変えたのが、写真のリングです。
展示会ではサンプルとして母から借りて展示していますが、不思議と多くの方が手に取ってくださるジュエリーでもあります。
艶消しと鏡面仕上げ。
二つの表情が複雑に混ざり合い、ほんのりと手仕事の温かみを感じさせながらも、唯一無二の存在感を放っています。

小ぶりのサファイアも、大きなプラチナ台に留まっていた頃より、いきいきと輝いているように感じます。
ルビーやサファイア、エメラルドといった濃い色のルースは、18金と合わせることで、ほんのり可愛らしさが生まれ、日常にも取り入れやすくなります。
私は、お客様に「可愛い宝石」を身につけてほしいと思っています。
もし指にコンプレックスがあるなら、あえてリングを。
素敵なジュエリーを身につけることで、コンプレックスさえ少し愛おしく感じられる瞬間があります。
そんな女性を、私はこれまでたくさん見てきました。
母のこの指輪は、きっといつか私のもとへやってくる。
父が母を想う気持ち。
母が私を想う気持ち。
宝石には、そうした時間と想いが詰まっています。
物としての価値だけでなく、その背景ごと、大切にしていきたいと思っています。